さていよいよ、本格的な「色塗り」に入って行きます。
この際まず考えなければいけないのは「どのように光が当たっているか」ということ。上下左右前後、どのあたりが光源かをイメージしておきます。この光源の設定に応じて、カゲの付け方が大幅に変わってきます。必要ならばメモりましょう。詳しくはコラム「光とカゲについて」参照。
今回の絵では、「床からの(下→上方向の)強力な赤色光」という設定で塗っていくことにしました。後々に全体を赤っぽくすることも計算済みです。
髪の毛は私が色塗りで特にこだわる部分でもあります。
私は基本的に目→髪→…と塗って行くのですが、ここでは説明の都合上髪の方から先に説明させていただきます。なお、目を先に描くのはモチベを上げるために他なりません。色塗りは手前から塗るとかそういうのは全くないですよ。気分で。
髪の毛はポニーテールと前髪の方でレイヤーを分けていますが、まずは前髪の方から。前髪(hair)のレイヤーの一つ上に新たにレイヤーを作り、メニュー「レイヤー」>「クリッピングマスクを作成」とします。
↑このようになったら成功です。
この操作により、以降「レイヤー7」上に描いたものが「hair」レイヤーより外にはみ出す事はありません。さっきのグループを使った操作の簡易版のようなものですが、シャドウの頁ではこの操作が多様されます。
髪の毛は今回は2段影(=シャドウの色を2色用意)で塗ります。今作ったレイヤー7には1段目のシャドウ(1カゲ)を塗っていくことにします。
1カゲの色を決めたら、光源の位置や髪の流れに注意しつつ、鉛筆ツールで大ざっぱにシャドウの形をとっていきます。今回は線画と違って、後から形を整えるので、低い縮尺のまま描いても大丈夫です。
↑もう、これぐらいの雑さでOK。
大ざっぱに塗った後は、指先ツールを使いシャドウの形を整えます。
指先ツールは正直扱いにかなりのコツが必要です。(私も色々フォトショ講座を見てきましたが、指先を使ってる絵師さんはそんなに見かけません)が、
こういうサラサラ髪の毛のようなパーツの場合は、指先ツールを使うと思わぬ所で飛び出た線が「髪の毛らしさ」を表現してくれるので、私は好んで使ってます。
設定はだいたいこれぐらい。
コツとしては、
・毛の流れに沿って、撫でるようにドラッグ。
・サラサラの表現のキーワードは『細く長く』
・往復する感じで。一方向にX回ドラッグしたら、逆方向にもY回、みたいな。
・筆圧、ブラシサイズ、強さに注意する。
・指先ツールを使う事にこだわりすぎない。(←案外重要。指先は「こんな線が欲しい」「この部分は不要だ」といった即時的な要求に応えてくれるツールでは無いので、鉛筆、ブラシ、消しゴムやペンツールとの併用が大事です。)
↑こんな感じになりました。何か非常に説明をはしょったみたいですがごめんなさい
正直髪の毛+指先ツールについてはちょっと語り切れない部分があるので、やりたい方は実際にやってみて、慣れて下さいとしか言い様がありません、、、。
あと、指先ツールは基本的に『ぼかすツール』ですから、これを使うと全体的にぼやけ気味になり、シマリがないカゲになってしまいます。なので、ここでメニュー「フィルタ」>「シャープ」>「アンシャープマスク...」を使います。
↑これぐらいの値で適用して、
↑こんな感じになりました。シャープを使った後は色が変わる事もあるので、描画色で塗り潰し直しておくことも忘れずに。
え、何も違わない?甘い甘い、こういう細かい気配りがキモになってくるのですよっ。
さて、まだまだ髪の毛にこだわります。今度はカゲの尖っている部分を、消しゴムツールで薄くしていきます。
↑このように、硬さ0で、不透明度低め消しゴムを使って、
→
↑こんな風に、なだらかなグラデーションを意識して消しゴムをかけていきましょう。以降「消しゴムで薄くする」といったらこの事を指します。この作業によって、アニメ塗りオンリーで硬い印象を与えがちな髪の毛を、柔らかい印象にする事ができます。
その他、逆に硬さ0不透明度低めのブラシを使ってなだらかに濃くしたりだとか、うっすら濃くした上でさらに指先で撫でてみたりと、色々やって仕上げていきます。
↑
また、この段階で「照り返し」についても考慮します。照り返しについてはコラム「光とカゲについて」参照。
↑またも説明はしょってここまで来てごめんなさい。いろんな操作をやってるので説明しきれんのです…
さて、ここまで塗ってきたのは「髪の毛それ自体が作る『陰』」だけです。「別の物体が落とす『影』」もしっかり描く事でリアリティーが増します。ここでは肩から出てる輪っかの影ですね。1カゲと同じ色を使い、新しいレイヤーに影を描きましょう。
↑なお、クリッピングマスクは1つのレイヤーにたくさん設定することが可能です。
↑影は、影が作る物体から遠ざかる程ぼんやり+薄くなることを忘れずに。
さて、1カゲの作業はこれにて終了。1カゲにこだわりすぎると息切れしちゃうこともあるのですが、髪の毛の2カゲを入れるか入れないかで絵のメリハリが全然違ってくるので、こういう絵の場合はさぼらずに入れましょう。新しくレイヤーを作って、またクリッピングマスクを作って。そこにさらに濃い色のカゲ(2カゲ)を、さっきと同じ方法で。
2カゲを入れるコツは、
・思いっきり濃い色で。
・主に奥まった部分に思い切って入れる。全体的に入れたりしない。
・照り返しを忘れない。
↑こんな所でしょうか。
さて、髪の毛はまだまだ終わりません。次はハイライトを入れましょう。
ハイライトの入れ方は本当に人それぞれですが、私はハイライトにはそんなに時間をかけません。
↑覆い焼きツールでハイライトを付けます。この時、範囲:「ハイライト」の設定を忘れずに。
↑ まるたぁさん作の水彩ブラシを、ブラシサイズと不透明度にタブレットの筆圧感知を受け付けるように改造したもの(以下、単に「水彩ブラシ」)を使って、ベースである「hair」レイヤーに直接描きます。床からの光が直に当たる部分を、撫でるようにドラッグします。
↑覆い焼きツールを使うことで、このように簡単にツヤを出すことが可能です。
さああともう一息。今回は「下からの赤色光」なので、光の当たっている部分は赤色に近くなっていないといけません。ということで、さらに新しいレイヤーを作り、ブラシでぼんやりと赤色を乗せていきます。また、メリハリをつける為、陰となっている部分に青色を乗せていきます。
↑赤や青を乗せるレイヤーの設定はこんな感じです。「覆い焼きカラー」って所がミソ。
↑緑一色だけではなく、他の色も混ぜて塗る事で、絵に深みが生まれます。
私も最近覚えたテクニック。
さて、正直結構疲れましたが、今回はまだポニーテールが残ってます。ま、こちらも同じように…
↑といきたい所ですが、長い、複雑、曲がり過ぎと、三拍子揃ってて指先ツールの限界を感じました。右利きの私でもやりやすいように左右反転してみたりもしましたが、指先メインでやると汚さを隠しきれませんね。
ということで、ポニーテールは定石通り、パスを使ってカゲをつけていきます。
↑ここまで描いたカゲも、仮カゲとして一応残しておきます。
長くなったので、続きは次項で。